【InsurTech】インシュアテックがもたらす未来の保険

インシュアテック

インシュアテックとは、インシュアランス(保険)とテクノロジー(技術)を掛け合わせた造語。ウエアラブル端末を使って歩数を計測するなど、健康的な取り組みを評価する新たな保険も登場。IBMの人工知能(AI)型コンピューター「ワトソン」を活用したサービスや業務効率化も進むなど、保険業界は今急速に変化している。

健康になるほど保険料がお得に

「たくさん歩けば、キャッシュバックが受けられる」東京海上日動あんしん生命保険が2017年8月に、一部ドコモショップを対象に先行発売したのは、その名も「あるく保険」。契約すると、ウエアラブル端末が貸与され、日々の歩数をスマホアプリで管理する。2年間で1日平均8,000歩を達成したら、「健康増進還付金」が支払われる仕組み。具体的なインセンティブを盛り込むことで、保険の世界に新風を吹き込んでいる。

IoTで歩数を管理し、商品設計に組み込む保険は海外では一足早く実現されている。例えば、アクサフランスでは2014年から医療保険のキャンペーンとして、1ヶ月間1日平均7,000歩を歩くと50ユーロ分、1万歩なら100ユーロ分の医療機関で使えるクーポンを配布するなど、健康習慣を評価する仕組みを導入している。

他にも、自動車保険の世界で脚光を浴びているのが「テレマティクス保険」。テレマティクスとは、テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報工学)を組み合わせた造語で、ドライバーの運転データをスマホやカーナビなどを介して常時収集し、急ブレーキや急発進が少ない安全運転であるほど保険料が割り引かれる仕組みとなっている。

欧米ではすでに普及期にあるが、日本では開発競争が始まったばかり。そんな中、最も商品化に近いのが、損害保険ジャパン日本興亜とあいおいニッセイ同和損害保険といわれている。

前者は、スマホ用のカーナビアプリで運転診断を実施。スコアが高いほど割引率を上げる。後者は、カーナビで運転技術を分析して料金に反映させる計画となっている。いずれも割引率は最大2割引となる見通しで、2017年中の発売を目指す。

AIが全く新しい保険を作る

複雑極まりない保険業務をガラリと変えるのが、AI(人工知能)。IBMの人工知能型コンピューター「ワトソン」は、日本では特に保険業界で活用されている。例えば、コールセンターではワトソンにマニュアルや約款を学習させ、顧客の質問ごとに最適な答えの候補をモニター上に表示するシステムを構築している。保険金の査定でもワトソンが活躍しており、診断書を読み込んだ後、支払い対象の病気かどうかを即座に判定する。

しかし、それらはまだインシュアテックの序章に過ぎない。海外ではワトソンと気象情報とを組み合わせた「ワトソンウェザー」というサービスで、天気と事故の因果関係を分析する取り組みが始まっている。将来的には、気象の変化を事前に予測したうえで、例えば、大雪の日専用の保険などが発売されるといったこともあるかもしれない。

保険の見積もりを自動作成する実証実験も進む

車両事故の見積書をAIが自動作成する実証実験も進む。三井住友海上火災保険では、損傷した車両をスマホで撮影して送信すると、AIが事故の箇所や状況を特定し、修理費を自動で査定する機能を開発している。2016年末までに、約800人の損害査定人を動員して約54万枚の事故画像をデータベース化し、AIに学ばせている。同社によると、ホイールの損傷であれば、すでに97%の精度で特定できるとされている。もし実用化されれば、通常30日かかる保険金支払いが大幅にスピードアップするのは間違いない。

また、大量の統計情報を扱う保険は、もともとビッグデータと相性が良い。健康年齢少額短期保険とネオファースト生命保険は、健康診断データや診療報酬明細書などの医療データベースを活用して「健康年齢」を割り出し、この年齢が若返るほど保険料が安くなる新商品を相次いで発売した。

いくらインシュアテックが進んでも、ユーザーが自分の保険に関心がなければ改革は進まないが、今ではスマホがその架け橋となっている。例えば、ライフネット生命保険では、いち早くLINEを使った保険相談に対応。アニコム損害保険は2017年5月、ペット保険の保険金請求をLINE上で行う新サービスを開始。約3分での請求を実現。損保業界でも三井住友海上火災保険が2017年10月以降、ビデオチャットを使用し、契約者が車両の事故状況などを担当者とすぐに共有できるする予定となっている。

保険料が安くなるというインセンティブがモチベーションとなり、「健康に留意するようになる」「安全運転を心がけるようになる」といった、契約者の努力が促される。インシュアテックが実現する未来は、単に便利で得なだけではないのかもしれない。

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